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『ナイフ』 / 重松清

2016/09/14
「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕達の世界は、かくも脆いものなのか! ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子どもを守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その戦いは、決して甘くはないけれど。第14回(1998年) 坪田譲治文学賞受賞作。

ナイフ (新潮文庫)
ナイフ (新潮文庫)重松 清

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『ゼツメツ少年』に続き、重松清作品を読んでみました。内容は、「ワニとハブとひょうたん池で」「ナイフ」「キャッチボール日和」「エビスくん」「ビタースウィート・ホーム」の全5編からなる短編小説集になります。この5編に共通するテーマは、イジメ。学校でイジメの標的にされている当人、またはその親、その幼馴染みだったり、いろんな立場の視点からのイジメが描かれています。「ビタースウィート・ホーム」だけはちょっと違うテイストのストーリーではあるけれど、でもやっぱりイジメがテーマなのではと思います。

描写が細かいので、まるでその場にいるような、もしくはテレビでドキュメンタリー番組を見ているような感覚になります。容赦ないイジメの描写には、読みながらつい顔をしかめてしまうほど。それに加え、主人公の心の描写もまた細かく、おそらくこの本を読んだら、イジメの経験がある人には共感を、経験のない人には疑似体験が得られるのではないかと思います。。

「ワニとハブとひょうたん池で」では、イジメに1人で立ち向かう少女が登場します。孤独ではあるけれど、周りに助けを求めずに1人イジメと立ち向かう姿は、とても勇敢に見えます。反面、強がっているのかもしれませんが少女の妙に冷めた感じにゾッとさせられることも。反射的にイジメられていることを親に隠している姿は、子ども心が良く出ていると思います。

「ナイフ」では、背の低いサラリーマンのお父さんが登場します。このお父さんは、他の重松作品『ゼツメツ少年』にも登場しています。イジメにあっている息子をなんとかしてやりたいと思いつつ、何が出来るでもない父としての苦悩が綴られています。イジメの奥深さ、すぐに解決できるような単純なことではないってことが伝わってきます。何度も出てくる【私はナイフを持っている。】というフレーズがとても印象的。

「キャッチボール日和」は、見て見ぬふりのイジメの怖さが良く出ています。いじめに負けて欲しくないと願う親。親に自分の気持ちを受け入れられずに人生を諦めかけている子。親の気持ち、子どもの気持ちがかみ合わないという悪循環。この中では、一番苦手な作品かもしれません。何度も本を閉じたくなりました。

「エビスくん」は、親友なのかいじめっ子なのか?不思議な存在の転校生。なぜ、ひろしはエビスくんにやられっぱなしでやり返さないのか。イジメで繋がっているひねくれた友情ストーリー。あとがきに、この「エビスくん」という作品に重松清さんが込めた思いが書かれています。あとがき必見。

「ビタースウィート・ホーム」は、学校の先生と保護者との間のお話。モンスター・ペアレンツ?リアルにありそうなストーリー展開で、読んでいてザワザワします。

これらのストーリーには、辛く苦しいイジメが容赦なく描かれています。けれども、どの作品も解決までには至らないにせよ、ちょっとだけ前向きな気持ちになれる終わり方になっています。イジメを背景に、子どもの苦しみと大人の苦しみ、両方をしっかり描いた作品。イジメなんて関係ないと思っている方にも是非読んで欲しい1冊です。



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08:00 ・し【重松清】 | コメント(2) | トラックバック(0)

『ゼツメツ少年』 / 重松清

2016/08/18
ゼツメツ少年
ゼツメツ少年重松 清

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以前から気になっていた重松清さんの作品を初めて読みました。初めて読んだ著者の本がこれで良かったのかどうかはわかりませんが、こういう作風の本は初めてで、独特の世界に引き込まれ、一気に読みました。

<センセイ、僕たちを助けてください> <僕たちはゼツメツしてしまいます>  
<僕たちをセンセイの小説の登場人物にして、物語の中に隠れさせてほしいのです>

タケシからの手紙にはそう書かれていました。そしてこう続くのです。

<大事なのは想像力です>

そう。この本を読むためには、読者にとってもかなりの想像力を必要とします。タイトルの「ゼツメツ少年」とは、中2のタケシ、小5のリュウとジュンのこと。タケシから届く手紙~3人の旅の記録~を元に、センセイが書いた物語の世界が数ページのプロローグののち、一気に広がっていきます。

でもね。「タケシからの手紙を元に、センセイが書いた物語」を読んでいるはずなのに、徐々に物語の中の話なのか現実での話なのか混乱が生じてくるのです。タケシ、リュウ、ジュンといった実在の人物とセンセイの過去の作品に登場した人物が出会い、新たな物語の中で生きているのです。

彼らがなぜ「ゼツメツ少年」なのか。実在していたはずの彼らの身に、一体何が起こったのか。物語の端々から、その状況が徐々に知れてくるのですが、最後の数ページのエピローグで書かれている内容を読んでさらに混乱させられ、最後の最後まで想像力を働かせながら読みました。おそらく、一度読んだだけでは理解できない物語。<大事なのは想像力です>タケシのこの一文に尽きる物語だと思います。

正直、「ゼツメツ少年」の彼らには、素晴らしい未来は訪れません。子供が主役のストーリーで、こんなラストを迎える物語ってあるんですね。物語の中で彼らが発した心の叫びは、とても心打たれました。大人たちがなかなか気付いてやれない子どもの心情がとてもうまく表現されていて、いちいち心に響きました。そういった意味では、この作品は大人にも是非読んで欲しい内容なのではないでしょうか。

イジメ。不登校。自殺。死。そして、生。この物語には、そんな言葉が登場します。けれど、最後に「生(せい)」という言葉が登場したことが、実はとても大きなポイントなのでは?と思います。リュウのお父さんの言葉「生きるっていうのは、なにかを信じていられるっていうことなんだよ」は、子を思う親の気持ちが最高に凝縮されて紡ぎだされた言葉のように感じられ、涙が溢れました。

この世の中には、「ゼツメツ少年」のような子供達がきっと今もどこかにいるのでしょう。そういう子供達が「ゼツメツ」しない世の中にしなくては。もっと子供達と正面から向き合っていかなくては。大人として、親としてそう思わされた一冊でした。久しぶりにお気に入りの本に出会いました。

~追記~
この本を紹介するに当たり、調べていてわかったことが1つ。
この物語には、センセイの「過去の作品に登場した人物」が登場するのですが、その登場人物たちは、実際に過去の重松作品に登場する人物らしい。ということで、過去の重松作品を知ってる方が読むと、とても楽しめる作品のようです。どうやら作品を読む順番を間違えましたね、私。なんでよりによってこの作品を選んだかな~(笑)これを機に今後、重松作品を読んでいきたいと思います。



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